アメリカで2016年12月21日に、日本では2017年３月に公開予定の映画『アサシンクリード』のVRコンテンツがOculusで配信中だ。映画の世界観を完璧に再現したVR空間のなかで、登場人物になりきることができるというコンテンツである。
『アサシンクリード』という映画について、僕は日頃ゲームをたしなまないから今回初めて詳しく知ったが、ゲーム好きの人ならタイトルを聞いてピンと来るだろう。PS3、PS4用ゲームとして日本でも人気を博している「アサシンクリード・シリーズ」の映画化作品である。
ゲームの内容はこうだ――
ルネッサンス期、ヨーロッパ。世界を意のままに操ろうと企む「テンプル騎士団」に挑んだ、伝説の暗殺者集団「アサシン教団」。そのトップ暗殺者の子孫が、ある企業に身柄を拘束され、DNAをたどって祖先の働きを追体験する装置につながれる。かつてルネッサンス期のヨーロッパの地で、何が起きたのか。主人公はなぜ、このような体験をさせられているのか？謎が謎を呼び、素晴らしいグラフィックで再現されたルネッサンス期の街並みを駆け、戦いつつストーリーを進めていく――。
シリーズ第１作は各方面で高い評価を獲得し、後続のシリーズ作品も軒並み高評価で迎えられている。
映画『アサシンクリード』について
映画はゲームの世界観を継承しつつ、映画ならではのオリジナルなストーリーを描くものだという。
主演は野性味と気品をあわせ持つ人気俳優のひとりにして、娯楽作品からアート系の小品まで幅広く出演して独特の存在感を誇るマイケル・ファスベンダー。
共演はマリオン・コティヤール。現代映画界で最も演技力に長けた女優のひとりであり、『エディット・ピアフ～愛の賛歌』(2007)でタイトルロールのエディット・ピアフを演じ、アカデミー主演女優賞を獲得した。
このような演技巧者を揃え、さらに監督としてシェイクスピア劇の映画化『マクベス』(2015)で高い評価を得たジャスティン・カーゼルを起用した。
アンジェリーナ・ジョリーの出世作になった『トゥーム・レイダー』シリーズ(2001～2003)にせよ、ミラ・ジョヴォヴィッチが主演する『バイオハザード』シリーズ(2002～2016)にせよ、ゲームの映画化作品といえば純粋なエンターテインメント超大作として制作されるのが常だった。
『アサシンクリード』は予告編を観る限り、さすがシェイクスピア劇の監督が撮る作品らしく、重厚でシリアスなカメラワークに美しいアクション、全体に文芸映画の香りさえ感じさせる作品になっているようだ。
ちなみに、ファスベンダーとコティヤールはカーゼル監督の『マクベス』で主役のマクベス夫婦を演じている。
ゲーム、映画に登場する“VR的装置”
ところで、ゲームについてその概要を見ていると、そのなかにすでにVRを思わせるようなテクノロジーが使われていることに気づく。ゲームの、そして映画の主人公がつながれる「アニムス」という装置だ。
アニムスはDNAに働きかけ、そこに蓄積されている「祖先の記憶」を呼び出して追体験させる装置である。もちろんVRはそのようなものではないが、周囲360度がまったくの異界になるという部分はVRと同じだ。
映画『アサシンクリード』の予告編には、アニムスでの追体験をして現実に戻った主人公が、「あれはまるで現実だった」と感想を述べるシーンもある――まさしく、僕たちがVRを体験したあとにヘッドセットを取って言うセリフと同じだ。
そんな「VR的世界」を描く映画のVRコンテンツとして制作されたのが、現在配信中の『The Assassin’s Creed Movie VR Experience』なのだ。
タイトルを直訳すると、「映画『アサシンクリード』VR体験」という感じになる。そこからもわかるように、このコンテンツは映画の「体験」ができるというコンテンツであり、自由に動くことはできない。
しかし、映画の主人公が体験するルネッサンス期ヨーロッパにおける壮絶なアクションを、かなりリアルに味わうことができる――まるで「アニムス」につながれたかのように。
ちなみに、「アサシンクリード」シリーズといえばコレ、といわれる「飛び降りシーン」も体験できる。360度、まるで現実そのものの世界で体験する飛び降りはかなり衝撃的だ。高所恐怖症の人はそのへんにちょっと注意したうえで、ぜひチェックしてみてほしい。