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この世の“異界”をVRで巡る!「チェルノブイリVRプロジェクト」に注目

チェルノブイリプロジェクト僕たちが生きるこの世界には、おいそれと足を運ぶことができない地域がある。距離や時間、またその地域をめぐる事情に遮られて、足を向けられない場所がある。僕たちが実写映画を観たり、リアルなグラフィックのゲームをプレイしたりするのは、この世にありながら「異界」というべきその場所を「体験」できるからだ、と言うことができるだろう。
ヘッドセットを装着することで周囲360度の空間を「体験」できるVRというテクノロジーは、そんな「異界」への道しるべの役割も担ってくれるらしい。
これまでのように平面のスクリーンで異界の風景を観て体験するのではなく、異界の真ん中に立っているかのようなバーチャル・リアリティの中で、圧倒的な体験ができる。

■禁じられた「ゾーン」へ。
現在、ポーランドの「The Firm 51」というゲーム開発会社が、VRを活用した「チェルノブイリVRプロジェクト」を展開中だ。ウクライナ北部に位置するチェルノブイリ市を中心に、その周辺のプリピャチ市などのエリアをVRで巡り、「体験」することができる。

その地域は、1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故によって「ゴーストタウン」と化した。
以来、30年の時が過ぎた今も荒廃した街並みが放置されたままだ。研究者や、そこを「終のすみか」にすることを決めた一握りの老人たちの他は誰も住まず、「危険ゾーン」「死のゾーン」とされ、政府によって厳重に管理されている。
そこに広がるのはさながらSF映画に出てくるディストピアの風景そのものであり、しかも映画と違って大道具係が用意した「つくりもの」は一切ない。
錆びついた街並み、ひび割れた道路、ひっそりとたたずむ公園の遊具、静かに息づく木々。
それらは30年前から、そしてそのはるか昔からずっと存在していたものだ。それだけに、映画で再現された風景を見るのに比べて、重みは全然違う。

「チェルノブイリVRプロジェクト」では、立体画像を構成するための特殊な撮影器具が使われ、「ゾーン」のすべてが記録され、VRとして組み立てられた。
手を伸ばせば、漆喰がボロボロくずれる壁に手を触れることができそうなほどだ。

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■世界を“実感”するためのVR
VRは、ゲームや映画などのエンターテインメントを楽しむための新テクノロジーとして注目されている。
それに加えてもうひとつ、VRは、世界を余すところなくしっかりと「実感」するためのテクノロジーとして注目できるのではないか、とここでは書いておきたい。
今や「異界」と呼ばれ、特別な「ゾーン」に指定されるウクライナ北部の街はかつて、僕たちが今まさに日々の暮らしを営んでいるこの国の、この街と同じような場所だった。ある悲劇がそれを永遠に変えてしまったが、本質的には、チェルノブイリもプリピャチも僕たちの世界の一部であることに変わりはない。
VR用のヘッドセットを付け、スイッチを入れることで周囲360度に広がるその街の風景は、確かなリアルさをたたえてそれを教えてくれる。
ここが現実に、僕たちの立っている足もとから地続きで存在する街である、ということを教えてくれるのである。

ちなみに現在、「チェルノブイリVRプロジェクト」はOculus Riftなどに対応している他、2016年のうちにはPSVRにも対応予定とされている。