科学技術の発達はめざましい。18世紀末、イギリスで産業革命が起こってからトントン拍子というべきスピードで物事は進み、ほんの200年で人類は当たり前に空を飛び、インターネットで世界中のあらゆる情報にアクセスできる時代に突入した。
過去の人にとってははるかな夢でしかなかったもの――おそらく想像だにしなかったものが実現し、SFはどんどん現実に追い抜かれてゆく。
携帯電話や電気自動車、大陸間弾道ミサイルや海底探査機など最先端の科学が生み出した「文明の利器」は数多く存在し、SFフィクションで描かれたものも続々実現している。
2015年には、作品内設定に合わせて『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989)に登場した「ホバーボード」の試作機が開発された。車輪がなく、宙に浮いて移動するスケートボードである。
また、今年に入ってからは、同じくこの映画に登場した「足を入れると自動で足のサイズに合わせてフィットする靴」が実現し、限定品として世に出た。
そして今、日本の天才マンガ家が生み出し、ひとり(?)のネコ型ロボットの物語を通じて発表してきた「ひみつ道具」のひとつが、ついに実現――した!?
VR元年と呼ばれ、このテクノロジーに関するニュースが次から次へと飛び込んできた忙しい2016年の暮れもおしつまった12月20日のきょう、僕はある筋から「『どこでもドア』体験」に関する驚嘆すべきニュースを受けとった。
2017年2月、このドアを「体験」できるイベントが開催されるというのである。
VRで完全再現された「どこでもドア」
「どこでもドア」――それはマンガにしろアニメにしろ『ドラえもん』にふれたすべての人が知っているといっても過言ではない22世紀の「ひみつ道具」のひとつだ。
ドラえもんの腹部に装着された「四次元ポケット」から取り出されるその道具は、一見すると何の変哲もないピンク色のドアである。開き戸タイプの、普通のドアだ。
しかしこの道具、摩訶不思議なほどに発達した22世紀の科学の結晶でもあって、行き先を念じるだけで、そこが外国であろうと、海の底であろうと、宇宙の果てであろうと、どこにでも行けちゃうのである。ドアを開けると、別世界なのである。
今回、ついにそんな「どこでもドア」が実現したという……ただし、VRアクティビティとして。
VRアクティビティは、ヘッドセット+専用マシンで、よりヴァーチャル・リアリティの世界の没入度を高めるレクリエーションである。今回発表された「ドラえもんVR『どこでもドア』」は、ヘッドセットをつけて専用マシンにのることで、のび太くんのおなじみの部屋を歩き回り、「どこでもドア」を使うシーンを体験できるというのだ。
このVRアクティビティは、2017年3月に公開される『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』の公開記念として開発されたものだという。
映画は、例によってグータラ少年のび太のワガママに端を発し、避暑のために「どこでもドア」を使って南極に行くと、そこでナゾの腕輪を発見して……云々、というストーリー。
このストーリーに合わせて、2月に発表される「ドラえもんVR『どこでもドア』」では、のび太くんの部屋にある「どこでもドア」を開けると、南極の氷の世界にひとっ飛びできるようである。
そして、専用マシンは南極の風を吹かせ、氷壁が崩れるときの振動を伝え……というふうに、南極の環境を体感させてくれるものになるらしい。
2017年2月、東京都の商業施設「東京ソラマチ」で行われる試遊イベントの参加者は抽選のうえ、体験できるペア250組500人が決まるという。
「どこでもドア」を体験してみたい!そんな人はぜひ抽選にチャレンジしてみてほしい。