映画の制作・配給を行うアメリカの歴史ある映画会社、20世紀フォックス。
印象的なロゴミュージックを背景に、数ヶ所設置されたサーチライトが、星の輝く藍色の夕空、そして中央に鎮座する「20th CENTURY FOX」のモニュメントを照らす――このおなじみの映像が頭に流れる映画は、制作や配給を20世紀フォックスが手がけている。
『ダイ・ハード』シリーズや『ホーム・アローン』シリーズ、『スター・ウォーズ』シリーズなど大ヒットを記録したシリーズをはじめ、映画史上の名作を数多く制作・配給している。
アメリカを代表するエンタメ産業の会社のひとつだ。
今回とりあげるのは、この会社のゲーム部門として誕生した「FoxNext」が、映画関係のVRコンテンツを続々発表する構えであるというニュースだ。
その皮切りになるのが、2017年夏の公開を予定している『War for the Planet of the Apes』に関するVRコンテンツである。
この映画、日本公開はすでに決定しており、邦題も決まっている。
『猿の惑星:大戦記〈グレート・ウォー〉』だ。
『猿の惑星:創世記〈ジェネシス〉』(2011)に始まる、21世紀の『猿の惑星』新シリーズの最新作である。
「FoxNext」はVRコンテンツ制作の専門スタジオ「Within」と提携し、『猿の惑星:大戦記』に関するコンテンツを皮切りに、20世紀フォックスが制作・配給を手がけてきた映画関係のVRコンテンツを発表していく計画だという。
これが『猿の惑星』新シリーズだ!
『猿の惑星』新シリーズは、最近はやりの過去の名作をイチから作り直す「リブート」ではない。
その驚きの結末で、全世界の映画ファンを文字通りアッと言わせた『猿の惑星』(1968)の「前日譚」として制作されている。
オリジナルの『猿の惑星』は、僕も子供の頃に週末の夜の映画番組で出会って、大いに興奮した思い出がある。
現在発売中のDVDはパッケージがアレなので、今の子供はあの興奮にひたれない可能性が高い。
その点が少し残念だが、結末だけでなく作品全体の質が非常に高く、特撮技術や撮影技法、効果音の付け方、そして何よりサルの特殊メイクが絶妙であり、その点も注目できる。
パッケージを見ちゃった人にもオススメできる古典的名作なのである。
この映画は当時大ヒットを記録し、やがてシリーズ化されて『最後の猿の惑星』(1973)で大団円を迎える5部作となっている。
『創世記』に始まる21世紀の新シリーズは、名作を茶化さず、ヘンにいじらず、旧シリーズに込められていたシリアスな問題意識――人間の傲慢さや異なる文化の衝突、抑圧と支配、怒りと闘いといったテーマを散りばめて、良質なSFシリーズとして展開中である。
前作『猿の惑星:新世紀〈ライジング〉』(2014)ではついにサルと人間の断絶が決定的になり、旧シリーズの絶望的な1作目につながる展開へとなだれ落ちることが予告された。
すでに公開されている予告編でも、タイトル通りサルvs人間の大戦争が重厚に描かれることが示されている。戦慄のシリーズが、ついにクライマックスを迎えるのだ!
『猿の惑星VR』は新技術を投入したコンテンツになる?
『猿の惑星:大戦記』の世界を体感させてくれる内容になるであろう、FoxNextとWithinが手がけるコンテンツ。そこには、どうやらVRだけでなくその他の新技術も投入するようである。
自分ひとりで楽しめるだけでなく、「ソーシャルな環境で」「共有できる」という機能が付くようなのだ。
これまでにも、仮想空間上に作られた「部屋」に複数人が同時に入って過ごせるVRアプリがあったし、『スター・トレック』に登場する宇宙船のクルーになって、複数人でそれぞれ役割を分担して遊べるVRゲームもあった。
今年の秋に日本で公開されることが発表されている映画『大戦記』のVRコンテンツも、そのようなものになるのだろうか。
映画の予告編で描かれているようなハードな世界をみんなで共有し、体験する――なかなか強烈な体験になりそうだが、今のところは楽しみに待ちたい。