この夏、映画ファンにとっての「事件」は、アニメ映画の記録を更新した『君の名は。』と、『シン・ゴジラ』だろう。少なくとも怪獣好きの少年だった僕にとって、『シン・ゴジラ』はアツかった。今までのどのゴジラとも違う、恐ろしい災厄としてのゴジラ。完璧なパニックムービーだったと思う。
おそらく後々2016年を思い返すとき、「あの年は『シン・ゴジラ』が公開されたんだよなあ」と考えるに違いない。
もちろん、PSVRが出た年としても記憶されるだろう。
あるいはセットで思い出すかもしれない。何しろ、PSVRが出た10月13日に無料配信がスタートした「シン・ゴジラ スペシャルデモコンテンツfor PlayStation VR」が素晴らしかったからだ!
ゴジラのいる街で…
PSVRは、VR(ヴァーチャルリアリティ)というテクノロジーを利用して、ゲームをはじめとする色々なエンターテインメントを提供してくれるアイテムだ。
シネマティックモードを使えば、ヘッドセットを付けるだけでホームシアター気分を味わえる。
『シン・ゴジラ』のBlu-rayが出たらぜひ観てみたいところだが、「スペシャルデモコンテンツ」は映画ではなく、ゴジラが登場した世界に飛び込む感覚を味わえるコンテンツだ。
360度、見渡す限り焦土と化した都市がヴァーチャルワールドに再現されていて、やがて前方に映画で観たままのゴジラが登場する。大きくて、生物感がある。映画の3DCGを転用しているというから、リアルさも納得できる。
映画でも、ミサイル攻撃が全然効かない硬い皮膚や恐ろしい放射線流(口から吐く熱線)で僕たちを震え上がらせたゴジラだが、今回はスクリーンで隔てられた向こうではなく、まさに僕の目の前にヤツがいる!
この恐怖感と臨場感は特別なものだった。ほんの2~3分のコンテンツに過ぎないが、圧倒的な体験だ。
「虚構」の中に入る楽しみ
「映画の中の世界を体験してみたい」
それは、怪獣映画やファンタジー映画を好む映画ファンが一度は夢想することだと思う。
僕も魔法学校に行ったり竜にのって空を飛んだりしてみたいと思ってきたけれど、どうもそれは夢や想像では終わらないようだ。
ゴジラに蹂躙される街の中で右往左往したあの2~3分間、僕は確かに映画の中を生きていた。
2016年は「VR元年」といわれている。すべてはこれからだ。きっとこれからPSVRと映画をめぐるテクノロジーの発達はさらに続くに違いない。映画が描く虚構の世界が現実の世界にピッタリはまって、僕たちがもっと自然に、当たり前のようにそれを楽しむ時代がこれから始まるのではないか、という気がする。
その時代が、「現実対虚構」というキャッチコピーの付けられた『シン・ゴジラ』で始まったことも、なんだか感慨深い。
ちなみに「シン・ゴジラ スペシャルデモコンテンツfor PlayStation VR」は2017年の10月まで期間限定で配信されるようだ。まだあの世界を体験していないという人には、ぜひここでオススメしておきたい。