HOME > 映画作家とVRのカンケイ:奇想が光る名監督スパイク・ジョーンズがついに参戦か。

映画作家とVRのカンケイ:奇想が光る名監督スパイク・ジョーンズがついに参戦か。

スパイク・ジョーンズ映画会社の20世紀フォックスが、映像技術の革新を促すヴァーチャル・リアリティに参戦すべく設けたVR部門「FoxNext」。
この部門は、2017年の夏に公開される『猿の惑星:大戦記〈グレート・ウォー〉』のVRコンテンツを皮切りに、同じく2017年公開予定の『エイリアン:コヴナント』をはじめ、さまざまな映画関係のVRコンテンツの制作に関わることを発表している。

このプロジェクトは枝葉を広げ、FoxNext発の「映画×VR」の取り組みはさらに加速することになりそうだ。

今回の主人公、奇抜なアイディアが光るMVや映画の監督として知られるスパイク・ジョーンズもそこに参加する予定だという。
スパイク・ジョーンズはオリジナルのVR映画として制作される『I Remember You(仮題)』のプロデュースをつとめることが発表されている。

現代アメリカ映画の異端児スパイク・ジョーンズの仕事

アメリカのラップグループThe Pharcyde、彼らが1995年に発表した楽曲「Drop」のMV(ミュージックビデオ)は、路地裏に座り込む若者たちが不意に立ち上がり、心の赴くままに歌い踊りながら街をめぐる様子をワンカットで映し出す作品だ。

こう書くとよく見る構成のMVだけれど、実際に見始めると独特の雰囲気に気づくだろう。
奇妙な浮遊感を持ち、どことなく不自然な、奇妙な印象を与える映像なのだ。

dropその秘密は、最後に明かされる。
カメラの前に奇妙な絵が描かれたガラス板が出てきて若者たちの姿を覆い隠すと、たちまち絵がガラス板から消えてゆく。向こう側から若者たちが絵を消しているのか?
いや、彼らが手にしているのはスプレー缶や絵筆だ!ガラス板の絵は、彼らが描いたものなのだ。

そう、この映像の独特の浮遊感、奇妙な違和感に似た感じは「巻き戻し」によって与えられた印象なのだ。
3分半の映像のすべてが、一発撮りの巻き戻し撮影で作られているのである。

この独特のセンスを感じさせるMVを監督したのは、スパイク・ジョーンズ。
1990年代にはビョークやウィーザーといった歌手、バンドのMVを監督し、1999年には俳優のジョン・マルコヴィッチの脳に通じるドアを発見した人たちの悲喜劇を描く『マルコヴィッチの穴』で、映画監督としてのキャリアもスタートさせた。

「ヘンなMV」を作ってきた監督らしく、その後も『かいじゅうたちのいるところ』(2009)や『her/世界でひとつの彼女』(2013)といった、奇想が光る作品を発表している。

かいじゅうたちのいるところ少年と「かいじゅう」たちの交流を描いた『かいじゅうたちのいるところ』では、当然フルCGで描かれるべき「かいじゅう」たちを着ぐるみで表現し、顔の表情だけをCGで描いた。

着ぐるみのあたたかみや実在感と、CGによるリアル感が同居した独特の「かいじゅう」表現だった。

また、脚本も担当した『her/世界でひとつの彼女』では、ちょうどiPhoneの「Siri」のようにコミュニケーションがとれるアプリケーションと恋に落ちた男の奇妙な恋愛物語を美しく描き、映像だけでなくシナリオにも奇想を盛り込む才能があることを世界に示した。

彼がプロデュースするVR映画がどのようなものになるのか――ハリウッドを代表する異端児的作家であるスパイク・ジョーンズは、仮想空間を活用する映画で何を「体験」させてくれるのか、興味は尽きない。

『I Remember You(仮題)』監督はVR界を牽引するクリス・ミルク

今回、スパイク・ジョーンズはVR映画のプロデュースをつとめる。
彼とともに映画をプロデュースし、監督もつとめることが発表されているのは、すでにVR短編映画を制作し、VR映画の世界ではすでに名をなしているクリス・ミルクという人物だ。

喋るクリス・ミルク今年のサンダンス映画祭の「ニューフロンティア」(次世代テクノロジーを使った作品が発表されるプログラム)では、彼が制作に携わった『Life of Us』が発表されている。
『Life of Us』は地球に生きる生命の進化の軌跡をヴァーチャル・リアリティで体験できるという意欲作だ。
この作品の概要を見ただけでも、ミルク監督の並々ならぬセンスがかいま見えるだろう。
きっと、ジョーンズ×ミルクは魅力的なコンビになるに違いない。

スパイク、あなたの監督作品も待ってます!

「映画は監督のモノ」という言葉が昔からある。
名作『ショーシャンクの空に』(1994)はフランク・ダラボンの監督作として知られているけれど、この映画のプロデューサーであるニキ・マーヴィン女史については、少なくとも日本ではあまり知られていない(僕も知らなかったのでWikipediaで調べた)。

プロデューサーは映画制作を包括的に見て、その方向性を決め、面倒を見る。誤った方向へ行きそうになったら軌道修正をはかる。
重要なポジションである。
しかし、実際に制作の現場で指揮をとるのは監督である。作品の「個性」は、監督が生み出したものだ。

というわけで、制作が決定されている『I Remember You(仮題)』はあくまでも「クリス・ミルクのモノ」という見方ができるだろう。

大学時代に『マルコヴィッチの穴』を発見してビックリしつつ魅了され、『her/世界でひとつの彼女』まで追いかけている僕としては、今回のニュースを喜びつつも、名実ともに「スパイク・ジョーンズのモノ」といえる作品の登場も期待している今日この頃だ。
待ってるよ、スパイク!